時間がかかってしまいましたが、以前記事に書いた書籍、『父・バルトーク 〜息子による大作曲家の思い出』を読み終わりました。
こちらが以前の記事です。
↓
https://bokunoseikatsu.com/reeding/bartok/
この本全体を通して伝わってきたのは、父親としてのベーラ・バルトークの温かい人柄と、この世に生を受けて生きるという事に対する誠実さでした。バルトークの人生哲学については以前の記事でも触れていますが、節約家で質素な生活をしていたこと、人に嘘は付けない率直な性格であったこと、そして何より素晴らしいと思ったのは息子にこう言わせていることです。
─────────────────
父は、私が知り得た最も素晴らしい人物だった。
─────────────────
息子にここまで言わしめるような生き方をしている人が、果たしてどれくらい世界にいるものでしょう。
私たちが普段接する可能性のあるのはバルトークの作曲家としての姿です。音楽に関してもこの本には書かれていて、バルトークは楽譜に忠実な演奏を求めており、奏者の勝手な判断による速度変化などを嫌っていた様子がうかがわれます。非常に几帳面な人柄からも推察されますが、バルトークの曲は楽譜の指示に忠実に演奏することが大切になるのだろうと思います。
バルトークはピアノがなくとも頭の中で音楽を再生することができたそうなのですが、それ以外にも、自身や息子の喘息の原因を突き止めたり、食べると危ない食べ物を臭いで嗅ぎ分けたりと、音楽に関しても、それ以外においても鋭敏な感覚や嗅覚の持ち主だったようです。また、ものごとの理由を突き詰めて考えるような性格だったようで、それを考えると作曲した作品も熟慮の上で音が選ばれているのだと思います。
この本がクラシック音楽に全く関わりのない、バルトークの名前など見たことも聞いたこともないという方にお勧めかと言われるとそれは微妙ですが、アマチュアでもプロでもクラシック音楽を演奏したり鑑賞したりするのが好きな方には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。