幼稚園で屋上が円形の建物のところがあります。テレビで見かけたことのある方は多いのではないでしょうか。
この幼稚園は、「ふじようちえん」といいます。漢字で「富士幼稚園」と書くと、別の幼稚園になります。こちらはひらがなです。
ふじようちえんのひみつ 世界が注目する幼稚園の園長先生がしていること [ 加藤積一 ]
TEDという、色々な分野の方がプレゼンをする番組があるのですが、そこで、この幼稚園の設計をした手塚貴晴さんがプレゼンをしたことがあります。TEDは通常英語でのプレゼンなのですが、このときは日本語でした。
テレビであの屋上で子どもたちが遊んでいるのをみると、自由に走り回れて楽しそうだなと思うと同時に、落ちたりしないのかなという不安も感じていました。
周りはちゃんと柵で囲われていて、安全性にはもちろん配慮されています。
これはあまり意識したことがなかったことなのですが、この幼稚園は建物の中に木が生えていて、屋上まで貫通しているのです。木に登って遊ぶ子どももいるということで、建物の上だという意識ではなくて、アスレチック場に来ているような、自然の中で遊んでいる感覚になる場所なんだろうなと想像します。
ここで遊べるのは本当に羨ましいなと思います。
専門的な話として、こんなことが挙げられていました。
・隠れる場所がない方が、自閉症を発症しない
・遮音性が高まるほど、子どもの集中力が無くなる
・傾きがあると走り出す※屋上は、内側に向かってすり鉢状に傾いています
私はどれも、「へえ!そうなんだ!」と思いました。隠れる場所のない開いた空間の方が自閉症になりにくいというのは分かる気がしますが、二つ目の、遮音性が高いほど子どもの集中力が無くなってしまうというのはとても意外でした。
そういえば、防音を考えるときに、あまりにも静かな場所だと小さな音でも気になってしまうので、少しは音がしていた方がよいというような話を、建築関連の本で読んだことがあります。でも、それとはちょっと違った話なんですかね。
傾きがあると走り出すというのは、そうかもしれないなと思いました。私が以前住んでいた町にアスレチック場があって、そこにはすり鉢状の遊具がありました。確かに、意味もなく走り回っていたような記憶があります。
幼稚園を作るとき、管理する側の視点での実用性を重視したり、周囲の住民の方への迷惑とならないように配慮したりといった事情から、無駄な空間のない、音の漏れない建物を作ることが多いのではないかと思います。
しかし、子どもの視点で考えたらそんな建物はつまらないわけで、ふじようちえんのように、自分たちで自由に遊び方を考えて体が動かせる空間の方が楽しくて実用的なのかもしれません。
今後新しく作られる幼稚園については、こういった子どもの自由な発想を活かしやすい設計のものが増えていくとよいなと思います。
ちなみに、同じく手塚貴晴さんの所属する手塚建築研究所設計の、よしの保育園も円形の屋上を持った建物になっています。こちらは、屋根全体が斜めになっていて一部が地面とつながっています。とても独創的なデザインですよね。
手塚建築研究所の作品を見ることができます。
↓
TEZUKA ARCHITECTS
ふじようちえんを含む19作品が掲載されたカタログです。
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手塚貴晴+手塚由比 建築カタログ 2