音楽と音楽家という本があります。クラシック音楽、特にピアノが好きな方はご存知かと思うのですが、ロマン派の作曲家でシューマンという人がいます。作品では「トロイメライ」などが有名です。
その作曲家が書いた論説集のようなものなのですが、ベルリオーズ、ショパン、ベートーヴェンなど、別の作曲家の作品について批評していて興味深いです。音楽の評論には、音楽は聴くだけという方が書いたものと、シューマンのように自身も音楽家だという方が書いたものがあります。
特に、作曲家というのは曲が作られる過程に精通しているので信頼感が高いと思います。
そんなわけで、この本はクラシック音楽ファンの方は読まれると面白いと思います。
しかし、私が特に感銘を受けたのは曲や作曲家について述べている本論の部分ではなくて、末尾に書かれている「音楽の座右銘」という章です。アマチュアには厳しすぎるようなことも書かれていると思いますが、プロを志す人なら心得ておきたいことばかりが書かれていると思います。
例えば、
─────────────────
大きくなったら、流行曲などひかないように。時間は貴重なものだ。今あるだけの良い曲を一通り知ろうと思っただけでも。百人分ぐらい生きなくてはいけない。
─────────────────
という部分など、とても厳しいと思います。念頭にあるのは、単なる演奏家ではなく、真に芸術的価値のあるものを広めていこうとする芸術家のようです。
音楽家を志す人でなくとも、音楽家とはどういうことを考えている人たちなのだというのが知れる良書だと思います。音楽を専門でやられている方、趣味でやられている方から音楽にはそんなに興味はないけれども音楽家について知りたい方など、幅広く楽しめる内容だと思います。
私は長くクラシック音楽に関わってきているのですが、名前はよく知っている作曲家であるシューマンが、ここまでのことを考えていたのだというのを知れたのは新鮮でした。